ヒマラヤ杉とミカドパン一画の歴史的・文化的価値

谷中1丁目、ヒマラヤ杉のある一画は、江戸時代には三方地店(さんぽうちだな)と呼ばれた歴史のある地区です。

 三方をお寺に囲まれた中に、ヒマラヤ杉を目印に古くからのお店や工房、アトリエなどが並ぶこの一画は、谷中の寺町らしい風情のある場所として多くの人に愛されてきました。明治の頃からは画家や彫刻家、作家の川端康成なども近隣に住み、モデル紹介所もあって芸術文化活動を育む場所でもありました。ヒマラヤ杉のあるミカドパンの角は、かつて榎の木のあるお団子屋で、住人、芸術家、墓参客等、多くの方が立ち寄ったそうです。これまでに数々の映画やドラマの撮影場所としても登場しています。

 また、この一帯は、住む方々によりいつもきれいに掃除がなされ、挨拶が交わされ、路地には目が行き届き、お年寄りにも、小さな子を育てる家族にも大変住みやすい場所です。大正・昭和の住宅も現在まで引き継がれ、歴史ある貴重な町並みと風情をつくっています。  日常を大切にする暮らし方や、ご近所とのおつきあい、お年寄りや子どもがいる家族が住み続けられる家、地域の歴史を引き継ぐ町並み、大樹や草花、広い空のある環境は、この地区だけでなく、谷中地区全体で守り活かしたいまちの宝です。人々が安心して楽しく住み続けるために、今、日本でも世界でも求められている暮しのお手本です。